遠隔ハッキングの手口の例
この類型では色々な手口がありますが、よく話題になるものを例示します。
- 悪意のメールやSMSからマルウェア(ウイルス)に感染する。
- 知人・友人や、仕事の取引先、よく使うお店などに「なりすまし」たメールやSNSのDMからマルウェアに感染する。
- 既にハッキングされている知人・友人のアカウント(SNSなど)からサイバー攻撃が飛び火してくる。
- よく閲覧するWebサイトが乗っ取られ、そこからサイバー攻撃が飛び火してくる。
- フリーWi-Fiに関連する中間者攻撃によりサイバー攻撃を受ける。
このほか、非接触&ゼロクリックでいきなりスマホがマルウェア感染する、つまり知らない間に勝手に感染するという手口もありますが、それは政府関係者などを狙う非常に高度なハッキングのため極めて稀なケースですので、ごく普通に暮らしている民間人はそれほど不安視しないで大丈夫だと思います。
一般的な人が特に注意すべきは上記2番・3番だろう、というように当社は考えております。もちろん1番・4番・5番も注意が必要ですが、それらは2番・3番に比べるとリスクはそれほど高くないです。例えば1番「悪意のメール等」の手口は周知が進んでいるため既に多くの人が気をつけていることでしょう。また4番「Webサイト乗っ取り」はパソコンが被害を受けるケースは昔からよくありましたがスマホの事例はあまり聞かないので、今のところ被害を受ける確率は低いように思います(2024年現在の話ですが)。5番「フリーWi-Fi」は2010年代にかなり話題になりましたし、過去には私も目の当たりにしたことがあるのですが、ここ数年は実例を聞かなくなりました。
このように1番・4番・5番はリスクが少ない状況ですが、しかし2番・3番のように知人・友人が関係するものの場合、結構うっかり食らっちゃうことが多いです。
例えば知り合いから、もっともらしい内容のメッセージとともにURLやファイルなどが送られてきたら、うっかり開いてしまいがちです。実際、当社がこれまでに受けてきた相談(個人のお客様からの相談)では、知人・友人などに関係するケースがかなり多いです。
『知り合いからメールが届いたのだが、その知り合いは送っていないと言っていて…』とか、
『自分のSNSが乗っ取られて、知り合いに変なDMを送られちゃって…』など。
基本対策に関して
この記事を書いている2024年4月現在では、遠隔ハッキングの基本的な対策方法はAndroidとiPhoneで少し違います。Androidはアプリ配布やインストール等の要件(以下「アプリ関連要件」と言います)がそれほど厳しくなく、逆にiPhoneはその要件がかなり厳しいという違いがあり、それにより両者の遠隔ハッキングの手口は異なるため対策も少し違うのです。
しかしながら、今後はiPhoneもAndroidのようにアプリ関連要件が緩まることが決まっています。分かりやすく喩えると「規制緩和」というようなイメージです。現在のiPhoneはApple公式のApp Storeでなければアプリをインストールできないように制限されていますが、今後はその制限が緩まり、App Store以外からのインストールも可能になります。そうなるとセキュリティに問題のあるアプリ、例えば過去に流行った監視アプリやストーカーアプリのようなものが一般のユーザー層に再び出回ってしまう可能性があり、それに伴ってAndroidと似たようなハッキング手口が流行する恐れもあります。そのため以下に書く遠隔ハッキングの基本対策は、今後のことを考えてAndroidとiPhoneを区別せずに説明することとします。
対策① 脆弱性を埋める
脆弱性とはセキュリティの欠陥を意味する言葉です。
脆弱性 ≒ 侵入口 というようにイメージしてください。
※厳密に言うと上の表現は正しくないのですが、わかりやすさを優先しております。
ハッキングのセオリーは脆弱性を狙ったエクスプロイト攻撃であり、そのハッキングが実行されるとスマホを乗っ取られます。脆弱性と聞いてもピンとこない人が多いと思いますが、実はとても恐ろしいものなのです。そして脆弱性は次から次へと新しいものが発見され続けていますので、セキュリティを維持するためには新しい脆弱性が見つかる都度に埋めていく必要があります。
脆弱性の埋め方は「アップデート」です。
スマホの脆弱性のほとんどはOSやアプリのアップデートによって改善することができます。(例外的に改善できない脆弱性もありますが、それは「対策②」にて説明します。)
対策② 新しいスマホを買う
新しもの好きの人はスマホをよく買い替えますが、そうでない人は壊れるまで使い続けることも多いと思います。物を長く大事に使い続ける、それは個人的に賛成したい気持ちが強いのですが、しかしサイバーセキュリティの観点で言うと古くなったスマホを使い続けるのはかなり危ういことです。
その理由は2つあります。
- OSやアプリをアップデートできなくなる。
- 部品の脆弱性のリスクが生じうる。
一つ前の説明で脆弱性はアップデートで埋められることを書きましたが、スマホが古いと最新版のOSやアプリにアップデートできなくなるという問題があります。また、OSよりも更に深い層にある部品関連(ハードウェア/ファームウェア)の脆弱性が見つかることもありますが、あまり古い部品だと改善のためのセキュリティパッチが提供されない恐れがあります。このようにセキュリティ面での寿命のようなものがありますので、古いスマホを使い続けるのはリスキーなのです。
「何年で買い替えるべきか」について、メーカーおよび機種ごとに異なるので一概に何年と決められているわけではないのですが、一般的には下記の期間が経過したら買い替えを検討すべきとされています。
- Androidスマホの場合、3年ぐらい。
- iPhoneの場合、5年ぐらい。
対策③ メール等の真偽をまず疑う
既にご説明しているとおりメール、SMS、SNSのDMからマルウェア感染するケースが多いので、メール等のURLや添付ファイルを無闇に開くのは危険です。URL等を含むメールが届いたら真っ先に、「これ本当にあの人が送ったもの?」と疑うようにしたほうが良いです。そして、真偽の見分けがつかない場合は送り主に電話で聞くとか、メールや添付ファイルをパソコンにコピーしてウイルススキャンするなどした方が良いです。
ところで、こんなことも結構よくあります。
『なりすましメールのリスクを知っていたけれど、でも電話していちいち確認を取るのは面倒だし、ついつい「えいやっ!」と開いちゃった。』
普段は慎重な人でも忙しい時には大胆になったり、あるいは送られてきたタイミングによってはうっかり開いてしまいがちです。このように対策③を徹底できるかどうかは結構あやふやですので、自信がない場合は、次の対策④も合わせてご検討頂いたほうが良いです。
対策④ 有料のウイルス対策アプリを使用
危険なメールやWebアクセスをブロックする機能を持つウイルス対策アプリをインストールしておけば、「うっかり誤操作」によるマルウェア感染を予防する効果があります。
日本では下記3つの製品が人気です。
- トレンドマイクロの「ウイルスバスター」
- キャノンの「ESET」
- シマンテックの「ノートン」
※注意※
無料のウイルス対策アプリはお勧めしません。無料のものの中にはほとんど役立たずなものや詐欺アプリなども存在します。
「無料のものでも、無いより有ったほうがマシかも?」とは思わないほうが良いです。攻撃者はそのような心理を織り込んで詐欺的な無料アプリを配布しています。