過度に不安を煽らないよう繰り返し申し上げますが、現在ではスマホの盗聴被害は受けにくくなっています。ただしあらゆるユーザーが絶対に大丈夫というわけではなく、不運にも幾つかの条件が揃ってしまったときなど、非常に例外的にですが盗聴されるリスクは0(ゼロ)ではないので、その例を以下でご紹介します。
例① 恋人、配偶者、同居人など、ごく身近な人により盗聴されるリスク。
- 寝ている間に監視アプリ等を仕掛けられる
- 自宅に放置している古いスマホに監視アプリ等を仕掛けられる
これまでの事例を見ますと、身近な人がスマホを直接操作して監視アプリ/スパイアプリ等を仕掛けるというケースが最も多いです。
- 夫の浮気・不倫を疑って、妻が夫のスマホに監視アプリ等を仕掛ける。
- ストーカー気質のある元恋人が仕掛けていた。
このような事例が過去には度々ありました。私が担当した事案で特に多かったのは、
浮気・不倫関連や、離婚に際しての財産・親権の争いに関連するケースの相談を受けることが多かったです。
ただし現在では監視アプリ等の入手が以前に比べると難しくなり、一般の人が軽い気持ちで悪用できないようになりましたので、盗聴リスクは大幅に減っています。
もし身近な人が異常に強い動機・執着心を持っていて、監視アプリを自作するとか、闇サイトで購入するとか、あるいは悪質なハッキング代行業者に依頼するなどによりスマホを盗聴できるようにされてしまう可能性はあるかも知れません。そんな状況は極めて稀なことですが、もし該当するような場合には当社にご相談下さい。
例② 他人に用意してもらったスマホや、初期設定を他人に「丸投げ」したスマホ。
前の例①と似ていますが、違うのは「最初から仕掛けられている」という点です。初期設定の段階で監視アプリ等を仕掛けられ、そうと知らずに使用し続けていたという例です。
IT/デジタル機器が極端に苦手な人は、身近な誰かに製品選びから購入、初期設定まで全て任せてしまうことはよくあり、そのような場合にこの例②のリスクが生じ得ます。ただし例①と同様の理由により、現在では実際に盗聴が起こるリスクは低いです。
しかしですが、この場合は盗聴とは違う問題が生じ得ることを理解する必要があります。丸投げした相手に様々なID/パスワード等が知られ、かつ使用者本人は設定を理解していない&管理できていない状態となるので、不正アクセスなどといった盗聴以外のサイバー攻撃に遭ってしまうリスクが高まります。例えば相手に悪意がある場合はクラウド経由で情報を盗まれるリスクがかなり高いですし、もし相手に悪意がなかったとしても、その人が不運にもフィッシング等の被害に遭ってしまい、パスワードのメモやブラウザに保存されているパスワード等が情報漏洩しますと、悪影響が使用者本人にも及ぶ危険性があります。
例③ 報道関係者、人権活動家など
非接触かつゼロクリックでスマホに侵入および遠隔操作する、つまり「知らない間に勝手に感染する」という非常に高度なスパイウェアが存在し、海外では実際にそれが悪用されたケースが度々発生しているようです。残念ながら私はその検体を入手できておらず、そのメカニズムを自ら解析したことがないので詳細はわからないのですが、2023年にNHKのドキュメンタリー番組で特集が放送されたこともあるそうで、その存在自体には疑義がないようです。
ただし一般の方にはほぼ関係がないと思います。これまでにそのスパイウェアのターゲットとなったのは報道関係者、人権活動家、政府関係者、弁護士などだそうです。それらに該当しない、ごく普通の人がターゲットになるとは考えにくいので、リスクはほぼないように思います。
【2024年4月22日に追記】
今後に懸念されること
Androidスマホの場合、高度なハッキングツールが無償配布されているようです。
そのようなツールが悪用された事案を当社ではまだ対応したことがありませんが、今後に当該ツール(またはその亜種)が普及してしまうと、政府関係者など一部の人だけでなく、世間一般の多くの人たちも脅威にさらされるリスクが生じそうです。当社は引き続き今後の動向に注視してまいります。
iPhoneの場合、現在はまだ安全が確保されていますが、近い将来に状況が大きく変わるおそれがあります。
これまでiPhoneはApple公式のAppストアだけがアプリを配布できる仕組みになっており、Appleによる厳格な審査に基づいたセキュリティ水準が確保されてきましたが、欧州連合(EU)の法律をきっかけにアプリ配布体制が変化することが確定していて、今後はサードパーティのベンダーによるアプリ配布も増えるであろう状況にあり、それに伴ってマルウェア配布のリスクが生じることとなります。